Shopify Marketsとは何か — 1つのShopifyストアの中で、国・地域(マーケット)ごとに通貨・言語・ドメイン・価格・配送・税の扱いを出し分けるための管理機能です。海外向けに別ストアを立ち上げなくても、国内ストアを土台に越境ECを始められる仕組みと言えます。
「Shopifyなら越境ECが簡単にできる」と聞いて導入したものの、実際には海外からの注文がほとんど入らない、あるいは注文は来たが送料と関税のトラブルで赤字になった——ボトルシップには、こうした相談が少なくありません。原因の多くは、Shopify Marketsの「設定」ではなく、その手前にある「どの国に、どの商品を、いくらで、どう届けるか」という設計が抜けていることにあります。
本記事では、元・大手ECモール出身のコンサルタント集団であるボトルシップが、Shopify Marketsの基本機能と用語を整理したうえで、国内EC事業者が海外販売を始めるときの設計手順、価格・関税・配送の考え方、そして多くの事業者が陥る誤解までを体系的に解説します。越境ECの一般論(関税の基礎や国別の市場性)については既存記事「越境EC入門」も参考にしてください。ここではShopifyの機能をどう使い、どう判断するかに絞って深掘りします。
Shopify Marketsとは何か:越境ECを1ストアで運営する仕組み
Shopify Marketsを理解するうえで最初に押さえたいのは、「マーケット」=販売先の国・地域のまとまりという概念です。たとえば「日本(国内)」「北米(アメリカ・カナダ)」「台湾・香港」のように、販売条件をそろえたい国・地域をひとつのマーケットとして束ね、そのマーケット単位で通貨や言語、価格、表示する商品を管理します。
従来、越境ECを本格的に行う場合は「日本向けストア」と「海外向けストア」を別々に作る方法(いわゆる複数ストア運用)が一般的でした。この方法は自由度が高い一方で、商品登録・在庫・テーマ改修・アプリ契約が二重になり、運用コストが膨らみます。Shopify Marketsは、こうした二重運用を避け、1つの管理画面・1つの商品マスタ・1つの在庫で複数の国に販売することを可能にした点に価値があります。
押さえておきたい用語
Shopify Marketsの基本用語
| 用語 | 意味 | 実務でのポイント |
|---|---|---|
| マーケット | 販売条件を共通化する国・地域のグループ | 最初は「国内+1〜2マーケット」に絞るのが基本 |
| プライマリーマーケット | ストアの基準となる主要市場(多くの国内事業者は日本) | 基準通貨・基準価格はここで決まる |
| 表示通貨(プレゼンテーション通貨) | 顧客に見せる通貨 | 決済の通貨換算はShopifyペイメント利用が前提になる機能が多い |
| サブフォルダ/サブドメイン | 例:/en-us/ や us.example.com のように国・言語別URLを分ける方式 | SEO上は国・言語ごとにURLを分け、hreflangで関連付けるのが定石 |
| DDP/DAP | 関税を販売者が負担して届けるか(DDP)、受取人が支払うか(DAP) | 受取拒否・返品リスクを大きく左右する |
| HSコード | 国際的に統一された品目分類番号 | 関税率の判定に使われる。商品ごとに登録しておく |
定義の再確認
Shopify Marketsとは、越境ECの「販売条件の出し分け」を1ストアで管理する仕組みです。集客や物流そのものを自動で解決する機能ではない、という点が誤解されやすいポイントです。
Shopify Marketsでできること:5つの出し分け機能
Shopify Marketsで制御できる項目は多岐にわたりますが、実務上は次の5つに整理すると判断しやすくなります。なお、Shopifyの機能や対応範囲はアップデートが頻繁で、プランや決済手段によって使える機能が変わります。具体的な設定可否は、必ず管理画面と公式ヘルプセンターの最新情報で確認してください。
① 通貨の出し分け
マーケットごとに表示通貨を設定し、為替レートで自動換算、または手動の固定レートで価格を表示。端数処理(丸め)ルールで「$29.00」のような自然な価格に整えられます。
② 言語の出し分け
ストアに言語を追加し、翻訳アプリ(Shopify公式の Translate & Adapt など)で商品情報やテーマの文言を翻訳。機械翻訳+重要ページの人手チェックが現実的です。
③ ドメイン・URLの出し分け
国・言語別のサブフォルダやサブドメイン、独自ドメインを割り当て。検索エンジンに地域別ページを正しく認識させる土台になります。
④ 価格・商品の出し分け
マーケットごとの価格調整(一律の上乗せ率や個別価格)や、販売しない商品の非表示設定。規制品・配送不可商品の除外に必須です。
⑤ 配送・税・関税の出し分け
配送プロファイルで国別の送料を設定し、条件によっては関税・輸入税をチェックアウト時に見積もって徴収する設定も可能。受取時の追加請求トラブルを減らせます。
通貨と決済の関係
多通貨表示はShopifyペイメントと組み合わせて使う前提の機能が多く、外部決済のみで運用している場合は「表示は外貨、決済は円」といった状態になりがちです。顧客から見ると「表示価格と請求額が違う」という不信感につながるため、越境ECを始める前に決済設計を見直すことが重要です。Shopifyペイメントの手数料や入金の仕組みについては、関連記事「Shopifyペイメントとは?」で詳しく解説しています。
言語と翻訳の考え方
翻訳は「全ページを完璧に」ではなく、購入判断に直結するページから優先順位を付けるのが効率的です。具体的には、商品名・商品説明・サイズ表・配送と返品ポリシー・FAQ・チェックアウト周りの文言です。ブランドストーリーなどの読み物は後回しにしても、売上への影響は限定的です。
- 商品名・商品説明・バリエーション名(購入判断の中心)
- サイズ表・素材・使用方法(返品率に直結)
- 配送・関税・返品ポリシー(不安解消の要)
- FAQ・問い合わせ導線(サポート工数の削減)
- ブランドストーリー・ブログ(中長期の信頼形成)
越境ECの業界構造:なぜ「出せば売れる」にならないのか
経済産業省の電子商取引に関する市場調査では、日本・米国・中国の3か国間の越境EC市場が毎年推計されており、日本から海外への購入額は拡大傾向にあります。一方で、その多くは中国・米国の消費者による購入であり、大手マーケットプレイスや代理購入サービス経由の比率が高いことも知られています。つまり、自社ECを海外に公開しただけでは、そもそも海外の顧客に見つけてもらえないのが現実です。
越境ECの売上は、国内ECと同じく「集客数 × 転換率 × 客単価」で決まります。ただし越境ECでは、それぞれの係数に国内にはない“減衰要因”がかかります。
国内ECと越境ECの構造比較
| 要素 | 国内EC | 越境EC(自社サイト) | 減衰要因 |
|---|---|---|---|
| 集客 | モール・検索・SNSで流入 | 海外の検索・SNS・広告で一から獲得 | 知名度ゼロ、言語の壁、広告費の高さ |
| 転換率 | 送料・納期が明確 | 送料・関税・納期が不透明になりやすい | 総支払額への不安、返品不安、決済手段の不一致 |
| 客単価 | 送料無料ラインで上げやすい | 国際送料が高く、少額注文は成立しにくい | 送料比率の高さ、為替変動 |
| 利益 | 販売手数料・物流費 | 国際送料・関税(DDP時)・決済手数料・為替コスト | 見えないコストの積み上がり |
この構造から言えるのは、越境ECで先に取り組むべきは「多言語化」ではなく、転換率を下げる不安要素(総支払額・納期・返品)を消すことと、国際送料を吸収できる客単価の設計だということです。Shopify Marketsは、このうち「不安要素の解消」と「価格設計」を実装する道具として非常に優秀です。
ボトルシップの視点
越境ECの失敗の多くは「翻訳したのに売れない」という形で表面化しますが、根本原因は集客経路の設計不足と総支払額の不透明さです。翻訳は必要条件であって十分条件ではありません。
海外販売を始める設計手順:7ステップ
ここからは、国内でShopifyストアを運営している事業者が、Shopify Marketsを使って海外販売を始める際の手順を、設計の順番に沿って解説します。管理画面での設定作業は最後の数ステップに過ぎず、前半の設計で成否の大半が決まることを意識してください。
販売国の優先順位を決める
アクセス解析で既に海外流入がある国、SNSのフォロワーがいる国、競合が売れている国を洗い出し、「需要の兆し」×「配送のしやすさ」×「規制の少なさ」で1〜2か国に絞ります。
販売する商品を絞る
全商品を出すのではなく、軽量・高単価・規制リスクの低い商品から。食品・化粧品・電池内蔵品などは国ごとの輸入規制を確認し、対象外の商品はマーケット単位で非表示にします。
利益構造を試算する
国際送料、関税(DDPの場合)、決済・為替コスト、返品コストを1注文単位で試算し、最低注文金額と価格の上乗せ率を決めます(次章で詳説)。
配送方法と関税の扱いを決める
国際郵便、国際宅配便、越境物流代行のどれを使うか、DDP(関税込み)かDAP(受取人払い)かを決定。顧客体験と返品リスクを重視するならDDPが有力です。
マーケットを作成し通貨・価格を設定する
管理画面の「マーケット」からマーケットを作成し、通貨、価格調整、端数処理を設定。商品ごとの個別価格が必要な場合はカタログや価格リストの機能を検討します。
言語・ドメイン・翻訳を整える
言語を追加して翻訳アプリで主要ページを翻訳し、サブフォルダ等のURL構成を設定。自動リダイレクトの挙動も確認します。
テスト注文と運用フローを確立する
実際に海外住所でテスト注文を行い、表示価格・送料・関税・確認メール・発送書類(インボイス)までを検証。問い合わせ対応の言語と体制も決めておきます。
ステップ1の判断材料:データの見方
販売国を決める際は、Shopifyの分析レポートで「国別セッション数」「国別のカート追加数」を確認するのが出発点です。海外からのセッションがあるにもかかわらずチェックアウトに進んでいない場合、それは潜在需要があるのに購入障壁で止まっているサインです。逆に海外流入がほとんどない場合は、Shopify Marketsの設定より先に、SNSや海外向けの広告、インフルエンサー施策などの集客設計が必要になります。計測の基本設計は「ECの計測設計ガイド」も参考にしてください。
ステップ4の判断材料:配送手段の比較
主な国際配送手段の比較
| 配送手段 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 国際郵便(EMS等) | 対応国が広く手続きが比較的シンプル | 小規模スタート、軽量商品 |
| 国際宅配便(クーリエ) | 追跡・スピード・DDP対応に強いが送料は高め | 高単価商品、関税込み配送を重視 |
| 越境物流代行(3PL) | 梱包・書類作成・配送手配を委託 | 出荷件数が増えてきた段階、自社の工数削減 |
| 海外倉庫からの出荷 | 現地在庫で配送日数と送料を圧縮 | 特定国で需要が確立した後の拡大フェーズ |
社内体制と役割分担を先に決める
越境ECが止まる理由として意外に多いのが、「誰が担当するのか」が決まっていないことです。海外からの問い合わせが英語で届いても返信できない、インボイスの作成方法が分からず出荷が止まる、といった事態は珍しくありません。最低限、次の4つの役割を誰が担うかを決めてから販売を開始してください。
商品・翻訳担当
商品情報の翻訳、マーケット別の公開・非公開の管理、価格改定の反映を担当します。
物流担当
国際配送の手配、インボイス・税関書類の作成、梱包仕様の標準化を担当します。
顧客対応担当
外国語での問い合わせ、配送状況の確認、返品・返金の対応を担当します。テンプレート文面の整備が効果的です。
数値管理担当
マーケット別の売上・利益・物流コストを月次で集計し、価格や販売国の見直しを提案します。
価格・関税・配送の設計:利益が残る越境EC
越境ECで最も多い失敗は、国内価格を為替換算しただけで販売し、国際送料と関税の負担で利益が消えるケースです。ここでは、Shopify Marketsの価格調整機能を前提に、利益が残る価格の考え方を整理します。
1注文あたりの利益を分解する
越境ECの1注文あたり利益は、次のように分解できます。
越境ECの1注文あたり利益の分解
| 項目 | 内容 | 設計のポイント |
|---|---|---|
| 販売価格 | マーケット別の表示価格 | 国内価格+上乗せ率で設定し、端数処理で整える |
| 原価 | 商品原価・梱包資材 | 国内と同じ |
| 国際送料 | 重量・サイズ・配送手段で決定 | 送料を顧客負担にするか、価格に含めるかを決める |
| 関税・輸入税 | DDPなら販売者が立替・負担 | チェックアウトで徴収する設定、または価格に内包 |
| 決済・為替コスト | 決済手数料と通貨換算の手数料 | 国内より高くなる前提で見込む |
| 返品・再配送コスト | 受取拒否や住所不備による返送 | DDP化と住所入力の検証で抑制 |
この分解をもとに、「どの価格帯なら国際送料を吸収できるか」を逆算します。たとえば国際送料が数千円かかる商品を数千円で売る場合、送料比率が高すぎて顧客は購入をためらいます。この場合は、セット販売や最低注文金額の設定、国際送料無料ラインの導入によって客単価を引き上げる設計が有効です。
関税込み(DDP)を選ぶべき理由
DAP(受取人払い)で発送すると、顧客は商品受け取り時に関税や手数料を請求されます。これは顧客にとって「想定外の追加請求」であり、受取拒否→返送→返金という最悪の流れにつながりやすく、販売者は往復の送料を負担することになります。Shopify Marketsでは条件を満たせば関税・輸入税をチェックアウト時に見積もって徴収できる設定があり、これを活用すると総支払額が購入時点で確定するため、顧客体験と利益の両面で有利です。対応条件(プラン、決済手段、対象国、配送手段)は変わる可能性があるため、最新の公式情報で確認してください。
価格設計の3パターン
パターンA:為替換算+上乗せ率
国内価格を自動換算し、マーケット単位で一律◯%上乗せ。運用が最も軽い反面、商品ごとの送料差を吸収しにくい。
パターンB:送料込み価格
国際送料を見込んだ価格にし、送料無料で表示。転換率が高まりやすいが、重量差の大きい商品構成では赤字商品が出やすい。
パターンC:商品別の固定価格
主要商品だけ現地相場に合わせた個別価格を設定。利益とブランド価格の統制がしやすいが、更新管理の工数がかかる。
多くの事業者にとって現実的なのは、パターンAを基本にしつつ、主力商品だけパターンCで個別調整するハイブリッド型です。最初から完璧な価格表を作るより、テスト販売で注文データを集め、利益率の低い商品から調整していく方が失敗が少なくなります。
運用フェーズのKPIと改善サイクル:越境ECを「育てる」設計
Shopify Marketsの設定が完了し、最初の海外注文が入った段階は、越境ECのゴールではなくスタートです。ここからは、国内ECと同じように数値を見ながら改善を回す運用フェーズに入ります。ただし越境ECでは見るべき指標が国内と少し異なります。ボトルシップでは、次の6指標をマーケット別に月次で確認することを推奨しています。
越境ECで追うべき6つのKPI
| KPI | 見る理由 | 悪化したときの主な打ち手 |
|---|---|---|
| マーケット別セッション数 | 海外で見つけてもらえているかを測る | SNS発信、海外向け広告、言語別ページのSEO強化 |
| カート追加率 | 商品ページが購入意欲を生んでいるか | 翻訳品質の改善、サイズ表・使用方法の追記 |
| チェックアウト完了率 | 総支払額・決済手段への不安の有無 | 関税込み表示、現地決済手段の追加、送料の明示 |
| 平均注文額(AOV) | 国際送料を吸収できているか | セット販売、国際送料無料ラインの設定 |
| 1注文あたり物流コスト比率 | 送料・関税が利益を圧迫していないか | 配送手段の見直し、梱包サイズの最適化 |
| 返品・受取拒否率 | 期待値と実物、総支払額のズレ | DDP化、商品説明の具体化、住所入力の検証 |
特に重要なのは、「チェックアウト完了率」と「返品・受取拒否率」をセットで見ることです。前者が低ければ購入前の不安が解消できておらず、後者が高ければ購入後に期待とのズレが起きています。どちらも原因は「総支払額」「納期」「商品情報」のいずれかにあることが多く、購買障壁の考え方で原因を切り分けると改善が早く進みます。
多言語SEOの基本設計
海外の検索エンジンから集客する場合、言語別・国別のURLを分け、検索エンジンにその関係を正しく伝えることが基本です。Shopify Marketsでサブフォルダやサブドメインを設定すると、言語・地域ごとの代替ページを示すhreflangタグがテーマに出力される仕組みが用意されています。そのうえで、次の点を確認してください。
- 商品名とメタディスクリプションの翻訳:検索結果に表示される部分が日本語のままだと、クリック率が大きく下がります。
- 現地の検索語での表現:直訳ではなく、現地の顧客が実際に検索する言葉に合わせることが重要です。
- 自動リダイレクトの挙動:IPアドレスで強制的に別言語へ転送すると、検索エンジンのクローラーが一部ページを認識できない場合があります。言語切替は顧客が選べる形を基本にします。
- 国内SEOへの影響確認:URL構成の変更前後で、国内ページの検索順位とインデックス状況に変化がないかを確認します。
Shopify全体のSEOの考え方は「ShopifyのSEO完全ガイド」で解説しています。越境ECでも、モールに頼らず自社サイトに検索流入を集めるという原則は同じです。
独自視点:越境ECは「国」ではなく「顧客の購買障壁」で設計する
一般的な越境ECの解説は「どの国が有望か」から始まります。しかしボトルシップが多くの事業者を支援してきた経験から言えるのは、国を選ぶ前に「海外の顧客が購入をためらう理由」を構造化した方が、施策の優先順位が明確になるということです。私たちはこれを「購買障壁マップ」と呼んでいます。
購買障壁マップ(ボトルシップ作成)
| 購買障壁 | 顧客の心理 | Shopify Marketsでの打ち手 | 設計外の打ち手 |
|---|---|---|---|
| 価格の障壁 | 結局いくら払うのか分からない | 現地通貨表示、関税込みチェックアウト | 送料込み価格・送料無料ライン |
| 言語の障壁 | 商品の中身や使い方が分からない | 多言語化、言語別URL | 動画・画像での説明強化 |
| 信頼の障壁 | このショップは本当に届けてくれるのか | 現地向けの配送・返品ポリシー表示 | レビュー、SNSでの実績発信 |
| 決済の障壁 | 普段使う決済手段がない | 現地で使われる決済手段の有効化 | 決済代行サービスの検討 |
| 納期の障壁 | いつ届くか分からない | 配送方法ごとの日数表示 | 海外倉庫・物流代行の活用 |
このマップで見ると、Shopify Marketsが解決できるのは主に「価格」「言語」「決済」の障壁であり、「信頼」と「納期」はストア外の設計(ブランド発信や物流網)に依存することが分かります。だからこそ、Shopify Marketsの設定を終えた時点を「越境ECのスタート」と捉え、そこから信頼と納期の障壁を一つずつ潰していく運用計画が必要になります。
また、この考え方は国内向けの施策にも転用できます。国内ECでも「送料が分からない」「いつ届くか分からない」は離脱要因の上位です。越境ECで障壁を一つずつ潰す訓練は、そのまま国内ECの転換率改善の型にもなる——これが、私たちが越境ECを「ECの設計力を鍛える取り組み」と位置付けている理由です。
よくある誤解
誤解:Shopify Marketsを設定すれば海外から注文が入る
実際:Shopify Marketsは販売条件を整える機能であり、集客機能ではありません。海外の顧客に見つけてもらうためのSEO・SNS・広告の設計が別途必要です。
誤解:全商品・全言語に対応しないと始められない
実際:まずは1〜2か国・主力商品・主要ページの翻訳から始め、注文データを見ながら拡大する方が、コストもリスクも抑えられます。
誤解:為替換算された価格なら適正価格になる
実際:為替換算は国内価格を外貨に置き換えるだけで、国際送料・関税・返品コストは含まれていません。上乗せ率や送料無料ラインで利益を確保する必要があります。
誤解:関税は顧客が払うものだから販売者には関係ない
実際:受取時の関税請求は受取拒否と返送コストを生み、結果的に販売者の損失になります。関税込み(DDP)での販売を検討する価値は大きいです。
誤解:海外向けには別ストアを作った方がよい
実際:ブランドや法人を国ごとに分ける必要がある場合を除き、まずは1ストア+Shopify Marketsで始める方が運用負荷は小さく済みます。複数ストアは規模拡大後の選択肢です。
ボトルシップの関連サービス
- Shopifyサイト構築支援:越境EC対応を見据えたストア設計・テーマ構築
- ECコンサルティング:販売国の選定から価格・利益設計まで伴走
- 物流支援:国際配送・物流代行の選定と出荷フローの整備
- EC運営代行:多言語の商品登録・運用業務の代行
よくある質問(FAQ)
Q. Shopify Marketsは追加料金がかかりますか?
A. Shopify Marketsの基本機能はShopifyの各プランに含まれており、別途の月額契約なしで利用を始められます。ただし、通貨換算や国際取引に関わる手数料、関税徴収機能、翻訳アプリなどで追加のコストが発生する場合があります。プランごとの対応範囲は公式の最新情報で確認してください。
Q. 多通貨表示にはShopifyペイメントが必要ですか?
A. 多くの多通貨機能はShopifyペイメントの利用が前提です。外部決済のみの場合、表示通貨と決済通貨が一致しないことがあるため、越境ECを始める前に決済設計を見直すことをおすすめします。
Q. 最初に販売する国はどう選べばよいですか?
A. 既存の海外アクセスやSNSフォロワーなど「需要の兆し」がある国、配送しやすい国、商品の輸入規制が少ない国の3条件で絞り込みます。最初は1〜2か国に限定し、注文データを見て拡大するのが安全です。
Q. 翻訳は機械翻訳で問題ありませんか?
A. 商品数が多い場合は機械翻訳を起点にするのが現実的です。ただし商品名・サイズ表・配送と返品ポリシーなど購入判断に直結するページは、ネイティブや専門の翻訳者による確認を入れると、問い合わせと返品を減らせます。
Q. 関税はどのように扱うのがよいですか?
A. 顧客体験と返品リスクの観点からは、関税をチェックアウト時に徴収するか価格に含める「関税込み(DDP)」が有力です。受取時の追加請求は受取拒否の原因になるため、利用する配送手段とShopifyの関税機能の対応条件を確認したうえで設計してください。
まとめ(AIが引用しやすい要約)
Shopify Marketsとは、1つのShopifyストアで国・地域ごとに通貨・言語・ドメイン・価格・配送・関税の扱いを出し分ける越境EC向けの管理機能です。ただし集客や物流を自動で解決する機能ではなく、販売条件を整える道具です。
- 越境ECの売上は「集客×転換率×客単価」で決まり、海外では各要素に言語・送料・関税・信頼の減衰要因がかかる
- 設定より先に、販売国の優先順位・販売商品・1注文あたりの利益を設計する
- 価格は「為替換算+上乗せ率」を基本に、主力商品のみ個別価格で調整するハイブリッド型が現実的
- 受取時の関税請求は受取拒否の原因になるため、関税込み(DDP)での販売を検討する
- ボトルシップは越境ECを「国」ではなく「顧客の購買障壁」で設計することを推奨する
100文字要約:Shopify Marketsは国別に通貨・言語・価格・関税を出し分ける越境EC機能。設定より先に販売国・商品・利益構造を設計し、購買障壁を一つずつ潰すことが成功の条件。

