「のしは付けられますか」「金額のわからない納品書にできますか」。お歳暮の時期になると、Shopifyで運営するストアにはこうした問い合わせが毎日のように届きます。ようやく注文が入り始めたと思ったら、今度は出荷の現場でトラブルが起きます。注文メモ欄に購入者が書いた「外のし・御歳暮・名入れ:山田」という一文を出荷担当者が見落とし、のしを付けずに梱包してしまう。気づいたのは出荷の直前で、包装をほどいて作り直し、その日の出荷予定が丸ごと後ろにずれていく――ギフト需要の大きい年末に、こうした場面は珍しくありません。
原因は、担当者の注意不足だけではありません。Shopifyは海外発のプラットフォームであり、熨斗(のし)や表書き、内のし・外のしといった日本式の贈答の作法を前提にした標準機能が乏しいため、ギフトの情報が「自由記述のメモ」という最も崩れやすい形で注文に入ってくる構造になっているのです。画面でギフトを選べるようにしても、その情報が出荷指示と梱包作業まで正しく届かなければ、ミスはなくなりません。
この記事では、Shopifyでギフト対応を実装する方式の切り分け方、注文データから梱包作業までの引き継ぎの作り方、そしてお歳暮・クリスマス・年末年始のギフト需要を迎える前に決めておくべき6つのルールを、実務の順番に沿って解説します。
この記事の結論 — Shopifyのギフト対応は、のしやラッピングの「選択肢を増やすこと」から始めるのではなく、受付締切・選択肢の数・有料か無料か・表書きの選び方・出荷日数・作業キャパの上限という6つのルールを先に決め、ギフト情報が選択式のデータとして出荷指示と梱包作業まで届く流れを作ることで、年末の作り直しと問い合わせを減らせます。
なぜShopifyのギフト対応は「注文メモ欄頼み」になりやすいのか
日本のギフト対応は、単に「包装するかどうか」の二択ではありません。贈答の目的に応じた表書き(のし紙の上段に書く「御歳暮」「御祝」などの文字)、名入れ(のし紙の下段に入れる贈り主の名前)、内のし(品物に直接のしを掛けてから包装する方法。控えめな贈り方とされる)と外のし(包装の上からのしを掛ける方法。手渡しや目的を明確に伝えたい場合に使われる)の区別など、細かな作法が組み合わさっています。
これに加えて、通販のギフトでは「金額を伏せた納品書」「送り主と届け先が異なる配送」「メッセージカードの同梱」といった、物流側の対応も必要になります。国内の大手ECモールや国産のカートシステムでは、こうした項目が以前から用意されていることが多く、購入者もそれを前提に注文します。一方、Shopifyの標準機能は世界共通の作りになっているため、日本式のギフトの項目はストア側で設計して追加する必要があります。
| ギフトの要素 | 内容 | Shopifyでの扱い(一般論) |
|---|---|---|
| のし・表書き | 御歳暮・御年賀・内祝など、目的に応じた文字を選ぶ | 標準の項目はなく、商品オプションやアプリなどで追加する |
| 内のし/外のし | のしを包装の内側に掛けるか外側に掛けるか | 同上。選択式にしないと記述がばらつく |
| 名入れ | のし紙に贈り主の名前を入れる | 自由記述の入力欄が必要で、文字数や表記の確認が発生する |
| ラッピング | 包装紙・袋・リボンなど | 有料なら別商品として扱う方法がよく使われる |
| メッセージカード | 購入者が書いた文面をカードに印字・手書きして同梱 | 入力欄の追加が必要。文字数の上限と改行の扱いを決める |
| 金額を伏せた納品書 | 受け取った人に価格が伝わらない書類にする | 納品書のテンプレートやアプリ、物流側の帳票で対応を検討 |
| 送り主と届け先の分離 | 購入者と異なる住所へ届け、送り主として購入者名を記載 | 届け先住所の入力は標準で可能。伝票上の依頼主の扱いは出荷側で設計 |
項目が足りない状態でギフトを受け付けると、購入者は書ける場所を探して、注文メモ欄(注文全体に対して自由に書き込める備考欄)に必要事項をまとめて書き込みます。注文メモは自由記述なので、「のし希望」「外のしで」「御歳暮でお願いします、名前は山田で」など表現がばらばらになり、出荷担当者が毎回読み解く必要が生まれます。これが、年末の見落としと作り直しの構造的な原因です。
ポイント:ギフトのミスは「人が読む情報」が多いほど増えます。対策の方向は、注意喚起を強めることではなく、購入者の入力を選択式のデータに変え、出荷担当者が読み解かなくても作業できる状態にすることです。
まず実装方式を4つに切り分ける
Shopifyでギフトの項目を用意する方法は、大きく4つに分けられます。どれが優れているかではなく、自社のギフトの種類・プラン・出荷体制に合わせて組み合わせるものだと考えてください。
| 方式 | 仕組み | 向いている用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 商品オプション/ラインアイテムプロパティ | 商品ページに入力欄や選択肢を追加し、カートの商品ごとに追加情報を持たせる | のしの有無、表書き、内のし・外のし、名入れ | テーマの改修やアプリが必要。カートを経由しない購入導線で入力が漏れないか確認 |
| ギフト用の別商品 | 「ギフトラッピング」「メッセージカード」を価格付きの商品として登録し、カートに追加させる | 有料ラッピング、有料のし、カード | どの商品に対するラッピングかが分かりにくい。数量の不一致が起きやすい |
| ギフトアプリ | ギフト用の入力画面や納品書の出し分けをまとめて提供するアプリを使う | 項目が多く、手作業での実装が難しい場合 | 出力されるデータの形式と、受注管理・物流側で読めるかを事前に確認 |
| チェックアウト拡張 | チェックアウト(決済手続き)画面にギフトの項目を追加する | 入力漏れを確実に防ぎたい場合 | 利用できる範囲はプランや対応アプリによって異なる。最新のヘルプで確認 |
ラインアイテムプロパティとは、カートに入った商品1点ごとに「表書き:御歳暮」のような追加情報を付けられるShopifyの仕組みです。注文全体ではなく商品単位で情報を持てるため、「この商品はのし付き、こちらはのし無し」といった混在にも対応しやすいのが特徴です。一方、注文全体に情報を付ける仕組み(カート属性)は、メッセージカードの文面のように1注文に1つでよい情報に向いています。
チェックアウト画面のカスタマイズ方法はShopify側で段階的に刷新されてきた経緯があり、どこまで項目を追加できるかはプランによって差があります。アプリ名や機能の比較に入る前に、自社のプランで使える方式を、Shopifyの最新のヘルプとアプリの説明ページで確認してください。
商品単位の情報
のしの有無・表書き・内外・名入れは、商品ごとに持たせる(ラインアイテムプロパティ)
注文単位の情報
メッセージカードの文面や、金額を伏せた納品書の希望は、注文全体に1つ持たせる
料金が発生する作業
有料ラッピングや有料カードは、別商品として登録し売上とデータを分けて管理する
注文データから梱包作業までの引き継ぎを設計する
ギフトの項目を画面に追加しただけでは、ギフト対応は完成しません。購入者が選んだ情報は、注文データ、受注管理システム(OMS:複数チャネルの注文を一元管理する仕組み)、出荷指示書やピッキングリスト(倉庫で商品を集めるための一覧)、そして梱包台の作業者へと順番に渡っていきます。どこで情報が落ちるかを、流れに沿って確認します。
STEP 1
購入者が選ぶ
商品ページやカートで、のし・表書き・ラッピング・カードを選択・入力する
STEP 2
注文に保存される
商品ごとの追加情報や注文属性として、決まった項目名で記録される
STEP 3
出荷指示に変わる
受注管理システムや物流委託先へ渡り、ギフト注文として区別される
STEP 4
帳票に印字される
ピッキングリストや作業指示書に、のしの内容が目立つ形で表示される
STEP 5
梱包台で作業する
のし紙の印刷・掛け・包装・カード同梱・納品書の差し替えを行う
特に注意したいのは、STEP 2とSTEP 3の間です。ラインアイテムプロパティやカート属性は、項目名(「表書き」「のし」など)と値の組み合わせで保存されますが、受注管理システムや物流委託先のシステムがその項目を取り込めるかどうかは、システムごとに異なります。取り込めない場合、出荷側では結局、注文画面を一件ずつ開いて目で確認する運用になり、メモ欄頼みと大差のない状態に戻ってしまいます。
ギフト注文を「通常の注文」と分けて流す
梱包台での見落としを防ぐ最も確実な方法は、ギフト注文を通常の注文と物理的・時間的に分けて処理することです。たとえば、ギフトの項目が付いた注文に自動で注文タグ(注文に付けられる分類用のラベル)を付け、出荷指示の段階で別のリストとして出力する。梱包台もギフト専用の台を用意し、のし紙や包装資材をその場にそろえておく。こうした「流れを分ける」設計にすると、通常の注文の中にギフトが紛れて見落とされることがなくなります。
価格表示を出さない納品書の扱い
ギフトの注文では、届け先の人に商品の金額が伝わらないようにすることが基本的な配慮です。Shopifyの納品書(パッキングスリップ)はテンプレートを編集できるため、価格を表示しない形にすることは一般に可能ですが、すべての注文で価格を消すのか、ギフト指定の注文だけ切り替えるのかで、必要な作業が変わります。物流委託先の帳票を使っている場合は、Shopify側の設定ではなく委託先のシステムで切り替えることになるため、どこで納品書を発行しているのかを先に確認します。
また、領収書や明細を購入者本人に届ける必要がある場合は、「届け先には金額なしの納品書、購入者にはメールで明細」というように、書類を誰に・どの形で届けるかを分けて設計しておくと、問い合わせを減らせます。
送り主と届け先の分離、複数配送先の問題
お歳暮のように「1回の買い物で複数の相手に贈りたい」という需要は、日本のギフト通販で特に大きなものです。しかし、Shopifyの標準的なチェックアウトは1注文につき1つの配送先が基本です。複数の相手に贈りたい購入者には、配送先ごとに注文を分けてもらうか、複数配送先に対応するアプリや運用を別途用意する必要があります。
| 対応の方法 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 配送先ごとに注文を分けてもらう | 仕組みの追加が不要で、データが崩れにくい | 購入者の手間が増える。送料の案内を丁寧に行う必要がある |
| 複数配送先に対応するアプリを使う | 1回の購入で複数の相手に贈れる | 注文データの分かれ方と、出荷側での取り込み方を必ず確認する |
| 法人・大口はリスト受付にする | 数十件単位の贈答にも対応できる | 受付・入力・確認の手作業が発生し、締切を早める必要がある |
送り主の扱いも決めておきます。届け先の伝票に依頼主として購入者の名前を載せるのか、ストア名を載せるのかによって、受け取った人の印象も、返品や受け取り拒否が起きたときの連絡先も変わります。配送会社の送り状発行システムで依頼主欄をどう設定するかまで、物流担当者と確認しておきましょう。
判断基準:年末前に決める6つのルール
ギフト対応で最も重要なのは、仕組みよりも先に「受付のルール」を決めることです。ルールが曖昧なまま繁忙期を迎えると、画面にどれだけ立派な選択肢を並べても、出荷の現場が受け止めきれません。次の6つを、ギフトシーズンが始まる前に決めておきます。
ルール1:受付締切
お歳暮・クリスマス・年内着など、目的ごとにギフト指定の受付を何日まで受けるかを決める
ルール2:選択肢の絞り込み
包装紙の柄や表書きの種類を、作業できる範囲まで減らす
ルール3:有料か無料か
のし・ラッピング・カードのどれを無料にし、どれに料金を設定するかを決める
ルール4:表書きの選択式化
表書きを自由記述にせず、決められた候補から選ぶ形にする
ルール5:出荷日数の延長表示
ギフト指定がある注文は出荷までの日数が延びることを、選ぶ場所のそばに表示する
ルール6:作業キャパの上限
1日に処理できるギフト件数の上限を決め、超えたときの対応を決めておく
ルール1:受付締切を目的ごとに決める
お歳暮は届けるべき時期が慣習的に決まっており、クリスマスギフトは当日までに届かなければ意味が薄れます。通常の出荷締切とは別に、「ギフト指定の受付は◯日まで」という締切を目的ごとに設定し、商品ページ・カート・お知らせの3か所で案内します。配送会社の繁忙期の案内は年によって変わるため、締切日は最新の情報を確認したうえで、余裕を持って設定してください。
ルール2:選択肢は作業できる数まで絞る
包装紙の柄やリボンの色を増やすほど、購入者には魅力的に見えます。しかし、選択肢が1つ増えるごとに、資材の在庫管理、作業者が覚える手順、間違いの種類が増えていきます。年末だけでも選択肢を2〜3種類に絞り、「選べる楽しさ」よりも「間違いなく届く安心」を優先するほうが、結果的に購入者の満足度は高くなります。
ルール3:有料か無料かを作業時間から決める
のしやラッピングを無料にするか有料にするかは、競合の価格だけで決めるのではなく、1件あたりにかかる作業時間と資材費から逆算して決めます。無料にすると利用率が上がり、繁忙期の作業量が読めなくなることがあります。有料にする場合は、ギフト用の別商品として登録しておくと、売上と利用件数を分けて集計でき、翌年の計画にも使えます。
ルール4:表書きは選択式にする
表書きを自由記述にすると、「お歳暮」「御歳暮」「お歳暮(のし有)」のように表記が揺れ、のし紙を印刷する担当者が毎回判断を迫られます。「御歳暮」「御年賀」「寒中御見舞」「内祝」「御礼」「無地」など、自社で対応する表書きを候補として決め、選択式にします。名入れのように自由記述が避けられない項目は、文字数の上限と、旧字体や記号を使えない場合の案内を入力欄のそばに書いておきます。
ルール5:ギフトの出荷日数は延ばして表示する
のし掛けや包装には、通常の梱包より時間がかかります。ギフト指定がある注文は、通常より出荷日数を延ばして案内し、配送日時指定を受け付けている場合は、最短のお届け日がギフト分だけ後ろにずれるように設定します。表示は配送ポリシーのページだけでなく、ギフトを選ぶ場所のすぐそばに置くことが重要です。
ルール6:作業キャパの上限を決める
1日に何件のギフトを処理できるかは、作業者の人数と1件あたりの作業時間で決まります。上限を超えそうなときに、受付を一時停止するのか、出荷日数をさらに延ばすのか、応援の人員を手配するのかを、あらかじめ決めておきます。上限を決めていないと、ギフトの注文が多い日ほど通常の注文まで遅れ、ストア全体の出荷品質が落ちてしまいます。
| ルール | 通常期の例 | 年末ギフト期の例 |
|---|---|---|
| 受付締切 | 通常の出荷締切と同じ | 目的ごとにギフト専用の締切を設け、早めに案内 |
| 選択肢 | 包装紙・リボンを複数から選択 | 2〜3種類に絞り、資材を事前に確保 |
| 料金 | 作業時間に見合う設定 | 利用率の急増を見込み、作業時間と資材費から再確認 |
| 表書き | 選択式 | 季節の表書きを候補の上位に並べ替え |
| 出荷日数 | ギフト分の日数を加算 | 繁忙期の遅延も見込み、さらに余裕日を加算 |
| 作業キャパ | 上限に余裕がある | 1日の上限件数を決め、超えたときの対応を共有 |
導入の手順とタイムライン
ギフト対応の準備は、ギフトの注文が増え始める時期から逆算して進めます。仕組みの改修やアプリの検証には時間がかかるため、繁忙期の直前に慌てて始めると、テストが不十分なまま本番を迎えることになります。目安として、次の順番で進めます。
- 現状の棚卸し…昨年のギフト注文の件数、問い合わせの内容、作り直しや誤出荷が起きた原因を整理する。
- 6つのルールを決める…受付締切・選択肢・料金・表書き・出荷日数・作業キャパを、出荷担当者とカスタマーサポート担当者を交えて決める。
- 実装方式を選ぶ…プランと出荷体制に合わせて、商品オプション・別商品・アプリ・チェックアウト拡張を組み合わせる。
- 出荷側との連携を作る…ギフトの情報が受注管理システムや物流委託先の帳票まで届くか、項目名と形式を確認する。
- 帳票と資材を準備する…金額を伏せた納品書、のし紙のテンプレート、包装資材、カードを準備する。
- テスト注文で確認する…のし有り・無し、内のし・外のし、複数商品の混在、別の届け先など、組み合わせごとにテストし、梱包台で実際に作業してみる。
- 案内文を公開する…受付締切・出荷日数・選択肢の説明を、商品ページとカートの近くに掲載する。
テストのコツ:テスト注文は管理画面で確認して終わりにせず、出荷指示書を発行し、実際にのし紙を印刷して包装するところまで行います。梱包台で「どこを見れば何をすればよいか」が一目で分かるかどうかが、本番の見落としを減らす決め手になります。
失敗する典型パターン
パターン1:注文メモ欄でギフトを受け付け続ける
冒頭の事例のように、項目を用意せずに注文メモ欄で受け付けているケースです。件数が少ないうちは回りますが、年末に件数が増えると、読み落としや解釈違いが一気に増えます。最低限、のしの有無と表書きだけでも選択式にすることが第一歩です。
パターン2:ラッピング商品と本体商品の数が合わない
有料ラッピングを別商品として登録したものの、購入者が本体を3点、ラッピングを1点だけカートに入れるケースです。どの商品を包装すればよいか分からず、確認の連絡が必要になります。「ラッピング1点につき商品1点」「まとめて1つに包む」など、数え方のルールを商品ページに明記しておきます。
パターン3:納品書に金額が載ったまま届く
ギフト指定の注文でも、通常と同じ納品書を同梱してしまうケースです。贈った相手に金額が伝わることは、ギフトでは大きな失礼にあたります。納品書をどこで発行しているかを確認し、ギフト注文で確実に切り替わるかをテストしておきます。
パターン4:選択肢を増やしすぎて資材が切れる
包装紙の柄やリボンの色を多く用意した結果、特定の柄に注文が集中して資材が切れ、別の柄で出荷してよいかを購入者に確認する連絡が続くケースです。繁忙期は選択肢を絞り、資材は余裕を持って確保しておきます。
パターン5:ギフト注文が通常の出荷を圧迫する
ギフトの作業に人手を取られ、通常の注文まで出荷が遅れるケースです。ルール6の作業キャパの上限を決めていないと起こりやすく、ギフトを選んでいない購入者からの問い合わせまで増えてしまいます。
【独自視点】ギフトは「装飾オプション」ではなく「出荷作業の工程追加」として設計する
ギフト対応は、一般的に「商品ページに付ける付加価値のオプション」として語られます。画面の上ではたしかに、のしやラッピングは選択肢の一つに見えます。しかし私たちは、ギフトを選ぶことは、出荷作業に工程を1つ追加する指示を出すことだと捉えることをおすすめしています。
この見方に立つと、設計の順番が変わります。最初に決めるのは選択肢のデザインではなく、ギフトの工程(のし紙の印刷、掛け、包装、カードの作成と同梱、納品書の差し替え)を誰が・どこで・1日何件まで行えるかという作業の設計です。そのうえで、作業として確実にこなせる範囲だけを、選択肢として購入者に見せます。表書きを選択式にするのも、選択肢を絞るのも、出荷日数を延ばして表示するのも、すべて「工程を確実に回すため」という一つの考え方から導かれます。
元・大手ECモール出身のメンバーとして、ギフト需要の大きいストアの運営を数多く見てきた経験から言えば、年末のギフトで評価を落とすストアの多くは、ギフトの選択肢が少ないからではなく、受け付けたギフトを正しく作業しきれないことで評価を落としています。ECは戦術ではなく設計で決まるという考え方は、ギフトという小さな機能にもそのまま当てはまります。
装飾オプションとして捉える
選択肢を増やすほど売れると考え、柄・表書き・自由記述を広げていく
工程追加として捉える
作業できる件数と手順から逆算し、確実にこなせる選択肢だけを見せる
結果の違い
前者は繁忙期に作り直しと問い合わせが集中し、後者は件数が増えても品質を保てる
ギフト対応を広げないほうがよいケース
ギフト対応は売上の機会を広げますが、すべてのストアで項目を増やすことが正解とは限りません。次のような場合は、対応する項目を絞るか、ギフト対応の範囲を限定することを検討してください。
- 出荷を物流委託先に任せており、のし掛けや包装の作業を依頼できない、または追加費用が見合わない
- 作業者が少なく、繁忙期にギフトの工程を追加すると通常の出荷が遅れる
- 商品の形状がばらばらで、包装資材を共通化できない
- 冷蔵・冷凍品など、梱包に時間をかけると品質に影響する商品が中心
- ギフト需要が限られており、仕組みの改修や資材の在庫が負担になる
こうしたケースでは、「無地のし1種類のみ対応」「ギフト用の箱入り商品を別に用意する」など、作業を増やさずにギフト需要に応える方法のほうが、ストア全体の品質を保てることがあります。ギフト用の箱入り商品をあらかじめ作っておけば、梱包台での追加作業がほとんど発生しません。
| 状況 | 広げずに取れる対応 |
|---|---|
| 作業人員が少ない | 無地のしと簡易包装の1パターンに限定する |
| 物流委託先で対応できない | ギフト箱入りの商品を別に登録し、作業を事前に済ませておく |
| 需要が一時期に集中する | ギフト期間だけ項目を表示し、締切後は非表示にする |
よくある誤解
- 誤解1:「のしの選択欄を付ければギフト対応は完成する」…画面に項目を付けるのは入口にすぎません。情報が出荷指示と梱包作業まで届き、納品書や伝票まで正しく切り替わって、はじめて完成します。
- 誤解2:「選択肢が多いほど購入者に喜ばれる」…選択肢が増えるほど、資材切れや作業ミスの可能性も増えます。確実に作業できる範囲に絞るほうが、満足度は安定します。
- 誤解3:「ラッピングは無料にしたほうが売れる」…無料にすると利用率が上がり、作業量が読めなくなることがあります。作業時間と資材費から料金を決め、利用件数を把握できる形にしておくことが大切です。
- 誤解4:「Shopifyでも1回の注文で複数の届け先に送れるのが普通」…Shopifyの標準的なチェックアウトは1注文1配送先が基本です。複数の届け先に対応する場合は、アプリや受付の運用を別途設計する必要があります。
- 誤解5:「ギフト対応は年末に向けて一度作れば終わり」…受付締切や表書きの候補、繁忙期の出荷日数は、季節や年によって見直しが必要です。お中元や母の日など、他のギフト時期にも同じルール表を使い回せるようにしておきます。
Shopifyストアの構築段階からギフトの項目や受注データの設計を整えたい場合は、EC構築サービスでご支援しています。のし掛け・包装を含めた出荷体制の見直しは物流支援サービス、繁忙期の運営体制づくりはEC運営代行サービスやECコンサルティングサービスをご覧ください。
年末ギフト前のチェックリスト
ギフトの受付を本番で始める前に、次の項目をすべて確認してください。未確認の項目が残っている場合は、受付開始を少し遅らせてでも先に解消しておくほうが、繁忙期の作り直しを確実に減らせます。
| 区分 | 確認項目 | 確認方法 |
|---|---|---|
| ルール | 受付締切・選択肢・料金・表書き・出荷日数・作業キャパの6つが決まっている | 出荷担当・サポート担当と同じ一覧表で確認する |
| 画面 | のしの有無・表書き・内のし/外のしが選択式になっている | 商品ページとカートで操作して確認する |
| 画面 | すべての購入導線でギフトの項目が入力できる、または入力できない導線が無効になっている | カート経由・商品ページの決済ボタン・スマートフォンで購入を試す |
| データ | ギフトの情報が決まった項目名で注文データに保存される | 管理画面とCSVの両方で確認する |
| データ | 受注管理システムや物流委託先の帳票にギフトの情報が表示される | テスト注文で出荷指示書を発行する |
| 帳票 | ギフト注文で金額を伏せた納品書に切り替わる | 実際に納品書を印刷して確認する |
| 作業 | のし紙の印刷・包装・カード同梱を、指示書だけを見て作業できる | 普段ギフトを担当しない人にテスト作業してもらう |
| 案内 | 受付締切と出荷日数の延長が、ギフトを選ぶ場所のそばに表示されている | スマートフォンの画面で確認する |
テスト注文は、テスト用の決済設定などを使い、確認後はキャンセルして在庫や売上の数字に影響が残らないよう処理してください。
FAQ:Shopifyのギフト対応でよくある質問
- Q. Shopifyの標準機能だけで、のしやラッピングに対応できますか?
A. のしの表書きや内のし・外のしといった日本式のギフトの項目は、Shopifyの標準機能だけでは十分に用意されていないため、多くのストアは商品オプション(ラインアイテムプロパティ)、ギフト用の別商品、ギフトアプリなどを組み合わせて対応しています。どの方式でも、選ばれた情報が出荷指示と梱包作業まで届くかを必ず確認してください。
- Q. のしの表書きは自由記述と選択式のどちらがよいですか?
A. 選択式をおすすめします。自由記述にすると表記が揺れ、のし紙を印刷する担当者が毎回判断する必要が生じます。御歳暮・御年賀・内祝・御礼・無地など、自社で対応する表書きを候補として決め、名入れのように自由記述が避けられない項目だけ入力欄にすると、ミスを減らせます。
- Q. 有料ラッピングはどのように設定するのが一般的ですか?
A. ラッピングを価格付きの別商品として登録し、カートに追加してもらう方法がよく使われます。売上と利用件数を分けて集計できる利点がある一方、本体商品との数が合わない注文が起きやすいため、ラッピング1点で何点を包装するのかといった数え方のルールを商品ページに明記しておくことが大切です。
- Q. 1回の注文で複数の届け先にギフトを送れますか?
A. Shopifyの標準的なチェックアウトは1注文につき1つの配送先が基本です。複数の相手に贈りたい場合は、配送先ごとに注文を分けてもらう、複数配送先に対応するアプリを使う、法人や大口の注文は送付先リストで受け付けるといった方法があります。いずれの場合も、注文データの分かれ方と出荷側での扱いを事前に確認してください。
- Q. 届け先に金額が分からない納品書を同梱できますか?
A. Shopifyの納品書はテンプレートを編集できるため、価格を表示しない形にすることは一般に可能です。ただし、すべての注文で価格を消すのか、ギフト指定の注文だけ切り替えるのか、物流委託先の帳票を使っているのかによって対応方法が変わります。最新のヘルプと委託先の仕様を確認したうえで、実際に印刷してテストしてください。
まとめ
結論:Shopifyは日本式ギフト(のし・表書き・内のし/外のし・名入れ・金額を伏せた納品書)の標準機能が乏しく、注文メモ欄頼みになりやすい構造があります。ギフトは装飾オプションではなく出荷作業の工程追加として設計し、選択式のデータが梱包作業まで届く流れを作ることが成功の条件です。
- 実装方式は商品オプション(ラインアイテムプロパティ)・ギフト用の別商品・ギフトアプリ・チェックアウト拡張の4つ。チェックアウト拡張の範囲はプランによって異なる
- ギフト注文は通常の注文と分けて流し、出荷指示書・納品書・伝票の依頼主まで切り替わるかをテストする
- 標準のチェックアウトは1注文1配送先が基本。複数の届け先への贈答は注文分割・アプリ・リスト受付で設計する
- 年末前に受付締切・選択肢の絞り込み・有料か無料か・表書きの選択式化・出荷日数の延長表示・作業キャパの上限の6つを決める
100文字要約:Shopifyのギフト対応は、のし・表書きを選択式のデータにして梱包作業まで届け、年末前に受付締切・選択肢・料金・出荷日数・作業キャパなど6つのルールを決めて工程として設計するのが要点。
この記事の執筆:ボトルシップ EC コンサルティング
元・大手ECモール出身のコンサルタント集団として、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopifyの運営支援と構築を手がけています。「ECは戦術ではなく設計で決まる」という考え方のもと、施策の前に売上と利益の構造を整理するところから伴走します。

